2012 . 4.17 更新
記:小林(益久染織研究所)
高倉家染頭32代目からお声が掛かり、33代目を継襲
染師の頂点、“紅師”が受け継げる秘伝を
授かることになった前田雨城先生。
それは一体どんな世界なのか・・・
一子相伝の世界、その伝統技術などを習得・体得するというのは全く想像できませんが、どのような世界なのでしょうか?
前田先生
「習うのは朝の5時から染屋に勤めている人が出勤してくる8時までの間。赤色に染める茜(あかね)という染料は陽があたると染まりませんからね。古代の色では朝暗いうちから始めて日の出までに終えなくてはならないものは、茜だけでなく他にも多いですよ。
自分は失敗ばかりなのに師匠が染めるとうまくいく。(なんでやろうなあ・・)といつも思っていた。師匠は「見とき」と何も説明をしてくれない。入門して1年ほどは、何度も何度もやめようと思いました。」
— 何も説明無し、見るだけ、ですか。自分で考えろということでしょうか。
前田先生
「何かしらの秘伝があると直感しました。そして温度と時間が鍵だと気がついてね。
師匠は温度計に頼るなと言っておられた。感得するということですね。
釜に指を入れたとき、パッと入れてやけどをするのは何度。「熱っ」と手を引くのは何度。1、2、3と数えられるのは何度。
4まで数えられれば何度、というように。ただ、晴れの日もあれば雨の日もあるからその日の天候によって、プラス・マイナス 2度から3度上下する。時間にもきちんと心配りをして師匠のやり方をそのまま真似ると、なんとか染まるようになりました。「やっと気ぃついたか」と、本気で教えていただけるようになったのはそれからです。」
次回へ続く...