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古代染織家|前田雨城×益久染織研究所社主|廣田益久

古代染織家|前田雨城×益久染織研究所社主|廣田益久 対談

最終回「染色の口伝」

2012 . 6.17 更新
記:小林(益久染織研究所)

染色の口伝の第一項は、当然のことを当然のこととして、
その口伝の第一条に取上げている。
当然の観念なしでは、当時の染付(そめつけ)は全く不可能である。

染色の口伝

一.よい染色(そめいろ)は五行の内に有り。
  本来の染色を得んとする者は、
  五行の訓(おしえ)に従って、その業をすること。
  五行の訓とは、
  木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(すい)、を言う。

木の章。

草木は人間と同じく自然により創り出された生き物である。
染料になる草木は自分の生命を人間のために捧げ、
色彩となって人間を悪霊より守ってくれるのであるから、
愛をもって取扱うのは勿論のこと、
感謝と木霊(こだま)への祈りをもって、
染の業に専心すること。

火の章。

火には誠せよ。誠なく火に接すれば、必ず害をうける。
火の霊(たま)は良き霊であるが、それに接する人の心によっては、
悪霊にもなる事を知れ。常に心して火の霊を祭ること。

土の章。

土より凡て生れる。土悪ければ、
その地の草木悪し、草木悪ければ染色悪し。
大地に念じ良き土を選ぶべし。
総じて清気溢れたる土に生える草木をよしとする。

金の章。

金気(鉄気・かなけ)は美しい色の大敵也。
金気(鉱物質ならん)なければ色彩固まらずと言えども、
金気にも善悪あるを知るべし。
霊(たま)に良き霊と悪しき霊のある如し。
一見して善しと見るは注意せよ。

水の章。

一に水、二に水、三に根気、と言う。
一の水は量を表し、二の水は質を表す。まず大量の水を必要とし、
染色(そめいろ)に適するは、治まった水にして素直なる水であること。
素直なる水とは草木に生命を与え得る水の事也。
三の根気とは、仕事を与えられた喜び、その喜びに祈りの心を添えて
与えられた仕事に自己の力の凡てを、捧げることを言う。

前田雨城氏著『日本古代の色彩と染』より

古代染色研究家|前田雨城
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